自然災害伝承碑|広島県|111年前の警告が今に語りかける。地図に刻まれた13年ぶりの新記号!
ベルです。全国の自然災害伝承碑をめぐっています。
今回は、広島県安芸郡坂町にあるひとつの石碑。 そこには、今から110年以上も前に先人たちが命がけで残した重い警告が刻まれています。
そして、この石碑が伝える教訓と、そこから始まった「未来の命を守るための新しい挑戦」について紹介します!
111年前の石碑が静かに告げていた警告
【訪問日:2026.8.23】
広島県安芸郡坂町坂東二丁目。ここに、明治時代に建てられたひとつの静かな石碑があります。碑の名前は、シンプルに「水害碑」。この地域をかつて襲った、恐ろしい洪水と土砂災害の記憶を後世に伝えるために、明治43年(1910年)に建立されました。
石碑に刻まれているのは、明治40年(1907年)7月15日の早朝、突如として牙をむいた自然の猛威です。数日間にわたって降り続いた激しい雨により、地域を流れる「総頭川(そうずがわ)」が耐えきれずに決壊。午前5時という、まだ多くの人が眠りについている時間帯に濁流と土砂が町を襲いました。この大災害によって、2名の尊い命が奪われ、家屋11棟が流失、さらに大切に育てられていた田畑も押し流されるという、非常に大きな被害が発生したのです。
先人たちは、この悲劇を二度と繰り返してはならないと強く願い、災害から3年後、被災の記憶が残る場所にこの石碑を建てました。
碑の概要

- 碑名: 水害碑
- 災害名: 洪水・土石流(1907年7月15日)
- 災害種別: 洪水・土砂災害
- 建立年: 1910年
- 所在地: 広島県安芸郡坂町坂東二丁目
- 伝承内容
- 明治40年(1907年)7月15日午前5時ころ、数日来降り続いた豪雨により総頭川が決壊し、死者2名、家屋流失11棟、田畑も流失するという大災害が発生した。
なぜ、教訓は届かなかったのか?記憶の風化という「心の盲点」
しかし、歴史は残酷な形で繰り返されてしまいます。
石碑が建てられてから111年が経過した平成30年(2018年)7月。 日本を襲った「西日本豪雨」により、この広島県坂町は再び大規模な土砂災害や洪水に見舞われ、多くの犠牲者を出す大きな被害が発生してしまいました。
この時、坂町では避難勧告が出されていました。 しかし、「水害碑」が建っている地区の避難率は坂町全体の平均と比べて「半分」にとどまっていたのです。
石碑が建てられた当時は、水害に対する恐ろしさや備え、避難することに対して住民の方々の防災意識は高かったのではないかと思います。しかし、どんなに生々しい悲劇を経験している地域でも100年以上の時が流れ、世代がいくつも入れ替わるうちに人々の記憶は静かに薄れていってしまいます。
このような思いを込めて「文字」として消えないように石碑に刻んで残されていても、日々の暮らしのなかに埋もれてしまったり、存在は知っていても自分のこととして受け止めることが難しくなる。 これこそが私たちが抱える「記憶の風化」の課題であり、「心の盲点」なのだと深く考えさせられます。
過去の教訓を、ただそこに「ある」だけのものにせず、どうやって今を生きる私たちが受け取ることや結びつけていくか。これは現代を生きる私たちみんなに課せられた大きな宿題です。
坂町のすばらしい取り組み

今回に坂町へお訪ねした際、ありがたく貴重な機会に恵まれました。
同じ場所にある原爆慰霊碑のお掃除にいらっしゃった地域の方から原爆と水害のときのことを伝承をしていただくという、とても貴重な経験をさせていただきました。
また、水害碑や慰霊碑の周辺には公園や伝承施設があり、災害時には避難場所として活用できるようになっていました。この周辺一体と伝承施設がとても素晴らしく、施設内で閲覧できる資料や映像が大変貴重な災害伝承に触れることができるだけでなく、運営においても様々なことを検討されたうえで無理なく続けていける在り方を選択されたのかなと想像しました。
そして、公園で自転車練習に乗る練習をしていたお孫さんとおばあさまが、お手洗いに施設へいらっしゃり(どなたでも利用できるようになっています)、施設内にある掲示物を見ながら「こんなんだったんよ」とお話をしている様子も拝見しました。
いろんなことを考える機会となり、訪問した日のSNSにもそのことをつぶやいているので、投稿も掲載します。(エックスへの投稿です)
坂町を訪問したときのつぶやき
地図に宿る、13年ぶりの新しい力!「自然災害伝承碑」の地図記号が誕生!
この「記憶の風化」という大きな壁に国土地理院が素晴らしい取り組みをスタートさせています!(国土地理院ウェブサイト「自然災害伝承碑の取組みについて」
地図・測量というプロフェッショナルの視点から、過去の教訓を地域の人々に分かりやすく伝え、的確な避難行動につなげてもらうためのプロジェクトです。この取り組みのきっかけとなったのが、今回紹介した坂町での平成30年7月豪雨での「水害碑」のエピソードだったのです。(国土地理院ウェブサイト:「自然災害伝承碑について」)
その象徴として誕生したのが、新しい地図記号「自然災害伝承碑」です!
なんと、新しい地図記号が制定されるのは、平成18年(2006年)の「風車」と「老人ホーム」以来、実に13年ぶりの出来事だったんです(令和元年/2019年9月から地形図に掲載開始)。国土地理院がこのプロジェクトにどれだけの熱意を込めているかが伝わってきますよね!
この取り組みでは、全国の市区町村と連携して各地の石碑の情報を収集。 国土地理院のウェブ地図「地理院地図」で、誰でも簡単に見られるように順次公開されています。
しかも、地図上にマークが表示されるだけではないんです! マークをクリックすると、以下の7つの貴重な情報がギュッと詰まった画面が表示されます。
- 碑名(石碑のなまえ)
- 災害名(いつ、どんな災害があったか)
- 災害種別(洪水、土砂災害、地震、津波など)
- 建立年(いつ建てられたか)
- 所在地(どこにあるか)
- 伝承内容(災害の種類や被害規模などを、分かりやすく100字程度に要約したもの)
- 写真(石碑の実際のすがた)
これなら、現地に行かなくても「私たちの住む街のすぐ近くに、こんな教訓が隠されていたんだ!」とひと目で分かりますよね。
未来の命を守るバトン!地図記号から広がる3つのアイデア
新しく生まれたこの「地図記号」。私たちの暮らしの中で、どうやって活用していけばいいのでしょうか? 内閣府のページでは、地域や学校の防災力をグッと高めるための「3つの素晴らしいアイデア」が内閣府「防災情報のページ」で紹介されています!

- 🎒 アイデア①:小中学校での「防災学習教材」に!
国語や社会、総合学習などの時間を使って、自分たちの身近にある「災害の歴史」を学ぶ教材として使います。昔の教科書の中のお話ではなく、自分たちの通学路の近くにある石碑の教訓として学ぶことで、子どもたちの防災意識が自然と育まれます。 - お子様だけでなく、大人の方にも好評です!
災害伝承コミュニケーターとしても活動しているベルによる、「重ねるハザードマップ×自然災害伝承碑」や「自然災害伝承碑めぐり旅から学ぶ防災」などの講座・講演を毎月、各月などご依頼いただき行っています。毎回参加してくださる方もいらっしゃいます。 - 👟 アイデア②:健康的に学ぶ!「歩こう会・探訪コース」の目標物に!
地域の「歩こう会」やハイキングのコースに、自然災害伝承碑を目的地として組み込みます。お散歩を楽しみながら、自然な形で「あ、ここには昔こんな水害があったんだね」と、過去の災害情報や地域の歴史に触れることができます。
ベルたちも自然災害伝承碑を目的地としたウォークラリーやデジタルスタンプラリーのイベントを開催したりしています。全国どの地域でも立案計画から実施までのサポートなどが可能です。わが町でもやってみたい!という方は、ぜひお問合せからご連絡ください。 - 🗺️ アイデア③:自分たちで調査!「体験型の防災地図づくり」に!
子どもたちや地域住民が、実際に地図を片手に伝承碑をめぐる「現地調査」を行います。自分たちの目で見て、写真に撮り、調べた教訓をもとにして、オリジナルの防災マップを手作りする。これこそ、最高のアクティブラーニングであり、究極の防災訓練ですよね! - こちらは私たちがぜひとも取り組んでみたいことの一つです。まだ実現していないのですが、災害伝承コミュニケーターとなって活躍してくださる方々によって実現されるのではないかとワクワクしています!災害伝承コミュニケーターを目指される災害伝承検定講座中級合格者の方々が誕生しています。来年には全国で災害伝承コミュニケーターとなってベルにお仲間が増えそうで楽しみです✨(災害伝承検定講座2026年秋期(初級)はまもなく受付開始予定です)

おまけ〜 妄想!「防災ウォークラリー」のすすめ〜

坂町は伝承施設だけでなく砂防も近く、原爆を伝承する石碑もありました。以前、岡山城の周辺をめぐって「室戸台風」の石碑を探訪した時にも、「ここでウォークラリーをやったら絶対に最高のコースができる!」って大興奮でロケハンしたのを思い出しました。
「日本全国の自然災害伝承碑をターゲットにして『災害伝承ウォークラリー』や『防災スタンプラリー』を開催したら、みんなでゲーム感覚で防災を学べるんじゃない!?」と一人作戦会議中です!
過去の自然災害の歴史や、先人たちが命がけで得た知恵を伝える「災害伝承」は、決してお説教や怖いだけのものではありません。自分自身はもちろん、大好きな家族、大切な友達の命を守るための「未来へのバトン」もうそれはあたたかな愛の塊なんです。
難しく考えず、まずは「近くにどんな石碑があるのかな?」と地理院地図をのぞいてみたり、お散歩の途中にちょっと意識して探してみることから始めてみませんか?
その小さな一歩が未来へのバトンをつなぐことになります。
自然災害が続いています。早め早めの避難行動で、ご安全にお過ごしください。
ではまた!ベルでした!😊





