バイアスの役割
「バイアス が持つ役割」
人間には、様々なバイアスが存在します。これらのバイアスは、必ずしも悪いものではなく、状況によってはメリットをもたらすものです。
悪者じゃないんだ ⁉️ どういうこと⁇
そうだよ! バイアスがあるおかげっていうメリットもあるんだよ。バイアスの役割を具体的な例と一緒に紹介するね。
バイアスには大きく3つの役割があります。
情報処理の効率化
ご存知の方も多いと思いますが、人間は、膨大な量の情報 を毎日処理しています。その回数は約3万5000回と言われています。バイアスは、そんな膨大な仕事をこなすために脳が情報を効率的に処理するために働く認知の仕組みの一つです。
具体的には、以下のような効果があります。
- 脳のクセに基づいて情報を処理することで、複雑な判断を素早くできる。
- 素早く判断することで、エネルギーや時間を節約できる。
【印象が偏る:初頭効果(しょとうこうか)】
例えば:人に対して
第一印象や最初にあったときのイメージで「○○な人」と決めつけてしまう。
これは人を認知するときに、目からの情報だけでなく、人から紹介された内容(例:社長さんです)など、最初に与えられた情報を過度に重視するバイアスによるものです。
人の印象は時に変化することも。初頭効果(しょとうこうか)は初めてあったときなど、最初の情報が重視される認知バイアスですが、自分にとって最も新しい、最後の情報を重視する「新近効果(しんきんこうか)」もあります。
例えば、第一印象で優しい人と思っていたけれど、優柔不断な人だったんだと思い直した、というようなことです。
決めつけてしまうんだったらダメじゃないの?!
よく考えてみて。バイアスを全く使わずに、初めて人と会うたびに五感やその他から入ってくる全ての情報を処理するとしたら、どうなると思う?
その人のことをしっかり理解して「○○な人」となるんだから、差別とかもなくなったりしていいと思う。
ベルちゃん、それはとても素敵なことだと思うけど、そのためには時間や情報がたくさん必要だし、脳も疲れ果てちゃうんだよ。だから、認知バイアスが働いて効率よく判断したりするんだよ。
行動の迅速化
日常の中で発生するさまざまな状況において、状況を迅速に判断し、行動に移すことは非常に重要です。判断をするために、あらゆる情報を1つ1つ吟味するとなると、時間がかかるだけでなく、わからないことや不安やストレスを感じることも出てきます。
具体的には、以下のような効果があります。
- 直感 や 感情 に基づいて 迅速に判断 することで、時間を節約 できる。
- 不安やストレスを軽減することができる。
【心を平静に保つ:正常性バイアス(せいじょうせい)】
例えば:待ち合わせ時間に友達が来ない
”道路が混んでるのかな、もうそろそろ来るだろう。何かあれば連絡くるよね”
このように考え、判断し、待つ、ことは、待ち合わせ時間に相手が来ない、という異常事態にあっても、正常の範囲と受け止め、心を平静に保とうとする心理傾向(正常性バイアス)によるものです。
待ち合わせ時間に友達が来ない!おかしい!何かあった?事故?事件?家で倒れてる?病気?LINEもない!
このように、いつもと違う状況(異常事態)に色々と想像し、不安やストレスを感じて過剰反応したりしていると心も疲れ果ててしまいます。日常生活でそんなふうにならないよう正常性バイアスを働かせ自分の心の安定・平静を保っているのです。
正常性バイアスがあることで、多くの人は心を平静に保ち日常生活ができるのですが、正常性バイアスが強くかかりすぎると本当の異常事態のときでも、異常と捉えず、避難が遅れる、避難しないなど、命の危険につながってしまうことがあります。
過去にも正常性バイアスの働きにより被害が大きくなったと考えられている災害もあります。
「正常性バイアアス = ダメなもの・怖いもの」だけじゃないんだね。それにしても、このバイアスはいろんな時に働いちゃってる気がする。。。こないだ、冷蔵庫にケーキが入っていたら「あ、今日は留守番だから僕のおやつだね」と思って勝手に食べちゃったんだけど、それも正常性バイアスでしょ!
それはね「確証バイアス(かくしょう)」っていってね、自分の都合のよいように思い込んじゃうバイアスだよ。「留守番だから僕のおやつ」はベルの思い込み、そういうのをふせぐためには確認が大事だよ。気をつけて。
社会的な適応
バイアス は、周囲の人々と協調し、社会の中で生きていくためにも役立ちます。
具体的には、以下のような効果があります。
- 集団の規範や考えに同調することで、周囲の人々との摩擦を避けることができる。
- 失敗したくない気持ちや不安と判断にかかる時間や手間を軽減できる。
【周りの人の行動や考えに合わせる:同調性バイアス(どうちょうせい)】
例えば:通販サイトで本を買うとき・・・
購入者のレビューがよいもの、☆の数が多いものを買う
え、これもバイアスなの?と思われる方も多いと思います。口コミサイトで評価の高いお店やレジャー施設、宿泊先などを選んだりすることも同様です。口コミを参考にすれば大きな失敗は回避でき、たくさんある商品の中で1つを選ぶことにかかる情報分析や時間も節約できます。
このバイアスは思いのほか強力です。
例えば、会社の終業時間になって・・・
ほかの人が残業で誰も帰らないので、自分の仕事は終わっているのに帰らずに残業してしまう、などもそうです。
このように、自分が決めたことや状況と違っていても、周囲の様子に合わせてしまいます。
2つの例を見ると同調性バイアスでもタイプが違うことがわかります。1つ目は情報を参考にして、判断にかかるコストや失敗の回避に、2つ目では、他の人を規範に、会社の人たちと違わないようにしています。
・1つ目:自分のために周囲の情報を活用する
・2つ目:周囲の情報や状況に従う
周囲の情報や行動に合わせるといっても、このようにタイプがあります。災害時の避難行動では、避難行動の促進にも、抑制にも働くことがあります。正しく理解することが大切です。
この3つだけじゃなくて、数百、もう数えきれないくらいにバイアスはあるんだって!災害が発生したときや備え(防災)をするためにはどんなバイアスを知っておくといいのかな?
そうだね、とっても大切なことだよね。災害時や備えのときに気をつけたいバイアスには有名なものとして「正常性バイアス(せいじょうせい)」はよく知られているけれど、ほかにもあるから勉強していこうね!(次回へつづく・・・)
バイアスの役割:おさらい
・3つの役割がある(情報の効率化・行動の迅速化・社会的な適応)
・必ずしも悪いものではない
・状況によってはメリット をもたらしている
・正しく理解することが大切