自然災害伝承碑|大分県で2万棟以上が被災した未曾有の水害を伝える石碑の教訓
こんにちは!ベルです。全国の自然災害伝承碑をめぐる旅をしています。今回は「おんせん県」こと大分県大分市です。明治26年に発生した未曾有の大風水害の記憶と、一度は流失しながらも地域の人々の手によって蘇った「明治弐拾六年 水難者慰霊之碑」を訪ねました。
未曾有の大水害と再建された祈り。
【訪問日:2026.5.5】
大分市鶴瀬(旧高田村鶴瀬)に、水難者の霊を慰める石碑が建っています。 大野川の氾濫によって甚大な被害をもたらした台風の記憶と犠牲者の名前を刻んだものですが、実は一度洪水で流失したのち、奇跡的に発見されて再建されたという歴史を持っています。

碑の概要

- 碑名: 明治弐拾六年 水難者慰霊之碑
- 災害名:明治26年台風第2号(1893年10月13日)
- 災害種別: 洪水・高潮
- 建立年: 1977年(昭和52年再建)
- 所在地: 大分県大分市大字鶴瀬
- 伝承内容
- 明治26年(1893)10月13日からの大雨により大野川が氾濫し、甚大な被害をもたらした。
- 碑に刻まれた流死者名簿には26名が刻まれており、家族を含めると63名の犠牲者がいた。
- 昭和18年(1943)の水害で流失したが、昭和52年(1977)に石碑の台座が発見され再建された
本当に?驚きの被害規模。県内で2万棟以上が被災
伝承内容や記録を読んでいて被害の圧倒的な規模に驚きました。 「明治26年台風第2号」は、大分県全域に数百年来といわれる未曾有の被害をもたらしました。県内全域での被害は、死者280人、流失および倒壊家屋が6,044棟、浸水家屋が15,334棟にも達し、なんと合計で2万棟以上もの家屋が被災したのです。
とくに石碑がある鶴瀬地区(当時の高田村鶴瀬)では、大野川の支流である乙津川の大堤防が数百間いっきに決壊し、およそ30余りの家屋がいっせいに流出してしまうという悲惨な状況でした。家屋が流された跡は基礎すら残らない砂利の荒れ地となり、高田村全体で77名の方が亡くなりました。中には、高田尋常小学校に通う8名の児童も含まれていたそうです。想像を絶する水の勢いと被害の大きさに、自然の脅威を思い知らされます。
再建 地域の人々の思い。
この碑には「地域の人々の思い」によって再建が繰り返され、未来へと繋がれているエピソードがあります。
この慰霊碑はもともとは大野川の堤防上にあったのですが、昭和18年の洪水で流されてしまい、長らく行方不明になっていました。ところが昭和52年、自動車学校の建設工事中に碑の一部が土の中から出土したのです!自動車学校の厚意と地域の方々の協力によって、碑は見事に再建されました。
さらに月日が経ち老朽化が進んだ平成15年にも、遺族だけの問題にせず「高田校区全体の問題」として地域ぐるみで話し合われ、再び立派に再建されたそうです。
おまけ 〜25年後、2回目の再建〜
再びの再建は全国にある自然災害伝承碑も抱える、もしくはいずれ抱える問題への解決に非常に参考になると思いました。
自動車学校の厚意によって再建されてから25年が経ったころ、石碑の老朽化が進み、周囲の環境の変化もあって維持管理が困難になっていきました。遺族の力だけでは碑を保持し続けることが難しくなったため、社会福祉協議会に相談が持ちかけられました。
その相談は自治会にも伝わり、「これは鶴瀬地区だけの問題ではなく、高田校区全体の問題である」として地域全体で取り上げられることになりました。そして、再建に向けた動きが進められ、平成15年(2003年)3月に見事再建が完了(竣工)し、同年7月20日には、高田校区をあげて立派な水難慰霊祭が執り行われたそうです。
遺族の抱えた悩みを決して忘れないと地域全体で共有し、「自分たちの地域の大切な記憶」として再び碑をよみがえらせた、とても温かく力強い素晴らしいエピソードですね。

この石碑は地域の方が日常的に利用している道路に面したところに建立されていました。同じ場所にほかの石碑などもありました。このような写真を撮ったりしていると地域の方に「見たことない人だなぁ」とじーっと見られたり、「何してるんですか?」などの声をかけられることがあります。
これって自然災害伝承碑めぐりあるあるなのですが、そういうときは、こちらの地域は顔の見える・わかる関係がある地域なのかなと想像しています。防災だけでなく防犯にもよいことですよね。
お声がけをいただいた際には、「自然災害伝承碑を調べている」ことをお伝えし、名刺をお渡しするんですが、関係するお話をしてくださる方や詳しく知っている方を紹介してくださることもあり、こういったことも自然災害伝承碑めぐりの楽しみのひとつになっています。
毎回ですが、現地へ行く、実際に見る、五感で体感することの大切さを実感しています。 過去の災害から学び、将来に備えることは、自分だけでなく大切な家族や友だちの命を守る力になります。皆さんもぜひ、身近な災害伝承に触れてみてください。
6月の台風がありました。被害にあわれた皆様にはお見舞い申し上げます。自然はいつでも人間の都合にあわせてはくれないものですね。「常に備えよ」につきますね。
では、また!ベルでした!😊





